2014年11月16日
青年たちは、いつの時代も理想を夢見て情熱を傾ける。
19世紀中期から20世紀初頭にかけて、日本から沢山の青年芸術家たちがパリに渡り、数々の西洋絵画や彫刻作品に触れた。そして、当時の最先端芸術だった印象派やキューヴィズム運動の旋風に芸術魂が大いに触発され、日本に新しい美術スタイルを持ち帰ってきた。
そんな時代の激変期を駆け抜けた、日本人芸術家たちの名作を展示する美術館が、10月29日新宿にオープンしたのだ。
高村光太郎が荻原守衛の作品を見て評したごとく、西洋芸術の利点を吸収しつつも、日本人としての精神的アイデンティティーを保ち、「内部欲求としてつよく確信を持って」作品作りをしたことを物語る名作が並んでいる。
ここでは、それらの論評はしないが、私の好きな作品は、高村光太郎の「手」、中村彝の「静物」、荻原守衛の「坑夫」、中原悌二郎の「墓守の老人」である。ロダンやセザンヌの影響を受けた作品であるが、日本人の持つ奥深い情操性を感じ取ることができる。
芸術の本質は、描かれた「もの」や作られた「物」がそこにあること以上に、その内部に深遠で清廉な魂が存在していることにある。
それはまた、芸術家自身にそのような魂がなければ表現することは不可能であろう。
中村屋の創業者である相馬愛蔵が、このような芸術家たちを支援し得たのも、彼には人間の高貴な魂に共鳴できる心があったからに違いない。