人の心を育てるためには、陽陰が調和した環境がとても重要です。
日本には、水を多く含んだ豊かでつややかな自然があります。その風景は、富士山やアルプスのような男らしく雄々しい山々と、こんもり盛り上がった女性的な曲線美をもった優しい山並みをもち、厳しさと優しさがうまく調和しています。
また、四季折々の自然の美しさは世界でも有数のものです。そんな自然の景観が包容力のある慈しみ深き心を育てます。
日本の食文化も繊細な心遣いをもっており、深い味覚、美しい飾りつけ、そして奥ゆかしい行儀作法は全てが芸術の域に達しています。
日本語もまた、世界に類を見ないほどの美しさと調和を兼ね備えています。特に文字の陽陰の在りようは見事です。ひらかなは女性文字、漢字は男性文字、書かれた文章を目で追うだけで、陽陰の調和したリズムが心を豊かに育てていきます。
日本人は、とても調和を好む民族です。古くは飛鳥時代初期、聖徳太子の「和をもって尊し」と謳ったところにすでに民族の魂が刻まれております。
調和させることは、自分をあまり強く主張するところには生まれてきません。相手のことを思いやり、為に生きることができなければ難しいことです。相手を尊び、謙遜な自分自身を保ち、侍り合う心がなければなりません。
胸を張って握手をすることも時に必要なことでしょうが、頭を下げてお辞儀をする方が、お互いに一つになれるのではないでしょうか。「実るほど、頭をたれる稲穂かな」という格言がありますが、人格は利他的な愛の成熟度によって量られるものです。調和は人格と人格の出会う時にこそなされる業です。
世界が一つになるためには、国と国、民族と民族、宗教と宗教がお互いに理解し合い、許し合う必要があります。日本人の丁寧さ、誠実さ、受容力、調和を愛する民族性は、争いの止まない世界に平和をもたらすことができる、特筆すべき資質に違いありません。
いま日本は国連の常任理事国になろうとしていますが、いくつかの国が執拗に反対運動を展開しています。そのあまりに自国中心的な考え方には辟易してしまいますが、しかし、経済的にも、それ以上に民族性から見ても、日本こそ「真の国連」にとって最も重要な国であるといえるのではないでしょうか。
日本文化の素晴らしさと調和を愛する民族性