花水木の咲く公園
花水木の咲くこの季節、
私の心はしっとりやさしく包まれて、
ノストラティックな夢の世界にさそわれます。
花水木の清純なピンク色のかおりのなかで、
甘い輝きをはなつ乙女のまなざし。
まつ毛についた小さな水滴が、
瞬きとともに別れの挨拶をして霧のなかに白く溶けていきました。
きっと、
「私の想いを受けとってください」と小声でつぶやいていたのに、
私はそれに気づかず、
返礼の言葉も語らず、
淡い思い出として時の流れに散らせてしまいました。
自然は生生流転をくりかえし、
小さな水滴は、
花水木のなかに取り込まれたのか、
季節が巡るたびに、
青春の思い出を私の心によび覚まします。
今の私なら、
どんな返礼の言葉をかけられるのか、
風に揺らぐ花びらが微笑みながら問いかけてくるようです。