大阪で出会った感動
●2013年 7月上旬
夕暮れの中を歩いていてふと足下に目をやると、コンクリートの道路上を一匹の蝉の幼虫が歩いていました。このまま放っておくと誰かに踏まれて死んでしまうだろうと思い、大切に手のひらの上に乗せて部屋に持ち帰りました。
カーテンに登るように体を押し当てると、すぐに登りだし、しばらくして動かなくなったので、力尽きたのかと心配していたら背中が割れてきて羽化が始まりました。
東京ではミンミンゼミが多いのですが、大阪ではクマゼミが多く、この幼虫もクマゼミでした。あの黒くて力強い体も、羽化したときには透き通った薄いオレンジ色で、羽も薄緑色でとても美しく、目の前で展開する生命の神秘に思わず時を忘れて見入ってしまいました。
翌朝になって、蝉の坊やはすっかりと成虫に変身し、明るい窓辺で大声で夏の訪れを知らせていました。
「よく頑張った!」と褒めてあげ、外に出してやると、「ジッ!」と一言返事をして、元気よく青空に向かって飛んでいきました。